■ 京都の割烹通いをして長いし、いくつも大好きなお店がありますが、ここほど最初のイメージからがらりと変わったところもありません。もう何度も述べたと思うのですが、こちらは開店当初、高級食材でたたみかけるように「どーだ?」と押してくるコースで、「おいしいけれど、強過ぎる料理だなあ」と、何となく恐いイメージを持ち続けていたのです。ところが今ではここほど安心して心穏やかに食事ができるところがないくらい(笑)。東京の友人に話しても、「いわゆる食通向けの」とか「男っぽい料理」とか今だにそのイメージが浸透しているみたいなんだけど、一度食べてみてよ! ってわたしは言うのです。繊細優美なおだしの味わい、思いのほか野菜たっぷり、どのお皿もひと皿としての完成度が高く、それでいて突出したハデな料理があるわけではなく、全体のバランスがトータルでものすごくいいと思うのです。祇園の中でも別格の一軒。ドンパチ盛り上がるコースもすごく楽しいけれど、こちらは静かに感動させるコース。(この多様性もいいです。) 以下1週間ほど前にいただいたものです。


●いつもの胡麻豆腐でスタート。●お椀(冒頭の写真も):香ばしく焼いた鯛、牡蠣、百合根。上にかぶら蒸し。熱々。上品で、精緻で、どこまでも深い味わいです。しみじみ美味。

●お造りは、ひらめ、剣先いか、とろ。

●この晩は鯛ではなく、珍しくひらめでした。きれいでしばし見とれました。


●「鯛の皮の醤油漬」として今年に入ってから作られた酒肴ですが、今や醤油漬ではなく、おだし漬です。ごく薄味で。「お酒飲みだけではなく、そうでない人にもおいしいと言ってもらわなければ」と西村さん。●いかの鯛肝和え。これもお酒とよく合います。


●さわら西京焼き、●すっぽんだしのにゅうめん。中に卵黄(鶏の)。ここで2度めのおつゆものが来て、最初のとはまた違って感動。

●蟹の甲羅酒♪ 蟹の身より先に甲羅酒です。味噌入りでこれは強いおいしさ。身体を温めておいて、

●蟹なます。柿、にんじん、大根、きゅうり、水前寺海苔。浜茹でされた蟹とのこと。それが、大根やきゅうりの甘酢漬けや甘い柿と合わされて、粋な味わいになっています。お皿も華麗です。甲羅酒をまず供されましたが、その後は普通の食材のひとつって感じで冷静に蟹を使ってられるなあと思う。


●やはり蟹は津居山港・吉野丸とのこと。

●海老芋と大根の白味噌仕立て。この海老芋は京都のもの。富田林がいいと言われるが京都の方がクリーミーで密度が高いと思うと西村さん。ほんと、歯を入れてざくっと割れる海老芋ではなく、とろりとした食感でした。白味噌が甘くて、京都らしいなあと思う。煮物でありながら同時におつゆもので、何ともいい感じ。

●食後、他のお客さまも一緒に少しブルゴーニュワインをいただきつつおしゃべり。
■ どのお皿も地味でシンプルな料理のようでいて、詳しいことはわからないのだけど、多分ものすごく技ありなんだろうと思うのです。何気なくすっと出てくるものから、本気の気迫のようなものがちらちらと感じられるのです。●ルセットは、ルセットにした途端にそこで終わってしまう。「完成したと思ってもそこで終わったらあかん」。ともおっしゃいます。「旨いだろう?」みたいな料理は自分にとっては当たり前のことになったとも。●コース全体のトーンが薄い目に設定されて、その中でゆるやかな起伏があり、優しい味~深い味を楽しめるという感じ。より大人な感じ。●「毎日が勝負だと思う。」なんて、一瞬本気の心構えを述べたかと思えば、「だしの味付けはコーラ飲みながらやってる♪」なんて信じられない冗談を言ったりもします。「キリンレモンのこともあるよ」だと。\(゜o゜)/アホなこと言わんようにね。でもこれこそが西村さん・・・カメラマンでも誰でも、神がかった天才に「素直にいい人」はいないってことかなあ? なんて思ったりもします。(-_-;) でも、西村さんは決してイケズではありません、優しい方ですから~!
★コースには定番の鯖寿司も入ります! わたしコース中でいただかず、持ち帰りしちゃったので写真が抜けてますが、今は千枚漬がのった美しい冬ヴァージョンです。