■ステファン・パンテルの 「Kezako (ケザコ)」 |
■今日は祇園に昨年12月13日にオープンした「Kezako(ケザコ)」の話をします。オーナーシェフのステファン・パンテルStephan PANTELさんは、1972年南仏プロヴァンス生まれ、にこやかでサンパティック、この顔に見覚えのある人は多いと思います。だって彼は祇園で仕事をしてすでに6年。今はもうないフレンチ「フィリップ・オブロン」でスーシェフをつとめ、その後この店の跡をまるまま使ってオープンした「クーラン・デルブ」でシェフをしていた人です。「オブロン」時代に、オブロンさんの取材に2002年初頭に伺った時、感じのいいスーシェフだなーと思い、取材中このステファンはずっとアテンドをしてくれておしゃべりしたのです。その時は確かフランス語で話したはず・・・。
■「クーラン・デルブ」も一度伺ったきりだったのに、今年の2月に「ケザコ」を訪ねたら・・・ちゃんとステファンはわたしのことを顔を見るなり思い出してくれて、頭いいなあ、うれしいなあと感激。フランス語を使える機会があればちょっとでも話したくてしょうがないわたしは、「久しぶり、ごぶさたごめんなさい。いいお店おめでとう!」なんてひとしきり言ってみたのだけど・・・返されたのは日本語で、「いえいえ、とんでもないです、まだまだこれから!」だって。これがフランス人か? 日本語の非常な流暢さだけではなく、謙遜してみせる様子が、もう完璧に日本人の風情。
■「ケザコ」はステファン自身がやりたいように作ったカウンター主体のレストランです。おしゃべり好きのステファンはキッチンにこもるより、オープンスペースで客と話しながら仕事したかったのだと思います。料理はコースのみで、劇場でひと晩楽しむ気持ちで出かけてゆけばいいのです。さて何が出てくるか? 5月の初旬の夜のメニューです。 ●アミューズに、フォアグラのコンフィ。奈良漬で巻いてあり、ソースは「南国ソース」、フルーツのソースです。●サーモンを低温真空調理したもの。わさびの花と葉、いくらと大根をあしらいに。レモンヴィネガーと菜種油のヴィネグレットソースがついています。ソースの酸味はかなり鮮やかなものでした。サーモンの食感は生に限りなく近くて、それでいて火の入っている非常にギリギリの状態でした。妙に舌にまとわりついて美味でした。●フランス産白アスパラとイタリア産の緑のアスパラに、ハモンセラーノ、くるみのクリームはこくがあり、くるみ油とブラッドオレンジのソースがさわやかな香味を添えていました。ちなみに「ハモンセラーノ」の「ハ」を、ステファンはきちんと発音するのです。「アモンセラーノ」とは言わないの。すごーい! ●グラスに、白いんげんのスープ。ほたるいかとバジルオイルがトッピングされています。スプーンを入れると底にねぎと白いんげん、バルサミコが仕込まれています。●はまぐり、あさり、桜鯛のブイヤベース風煮込み。なんと白味噌を使っているとのこと。まろやかで、それでいてにんにくもほのかに香っているのです。不思議・・・けれど破綻せず、かなりおいしいものでした。●メイン肉料理には鳩でした。こちらも真空調理されたものです。大原の野菜と麦がたっぷりたっぷりつけ合わされ、鳩と、牛テールのコンソメが張られて、お茶漬けみたいにいただきます。不思議な料理です。でもおいしかった・・・。鳩の繊細な口当たり、そして香りづけになんと桜の花の塩漬けが使われていて、なんとも優美な香りを放っていました。●デセールに、レモンクリームのパイ、いちごの柚子ジュレかけ。ヨーグルトのソルベ添えです。フイユテさくさくのパイ、口当たりがよかったです。●お茶とお菓子までいただくとお腹いっぱいです。非常に楽しいコースでした。ステファンすごいじゃない・・・! 「クーラン・デルブ」の時の料理は正直言ってここまでの印象はなかったのです。きっと今回は非常なコンセプトワークもなさって、やりたいこと、思いの丈を出し切っているのかもしれません。とてもフランス人の作ったフランス料理とは思えないけれど、オリジナリティにあふれ、どのお皿も味わい明確、驚きがあってコースの最後まで飽きさせることがありません。おいしかった! と同時に 楽しかった! と思えるコースです。
■竹のモチーフの1階カウンター後ろの壁面と、2階の個室です。器に関しては、ステファンは本当にガラスが好きなようです。カウンターには色違いのグラスが並び、大半の器はガラス製、リモージュの磁器を使っていても、いわゆるリモージュ然としたものとは違います。ここにあっては、すべてが軽やかに、楽しく。ステファンそのものですね。
「Kezako (ケザコ)」 京都市東山区祇園町南側570-261 電話075-533-6801 11:30~13:30LO、17:30~21:30LO 水曜休み(祝日の場合は営業も) 要予約。昼2800円、3800円、5000円 夜5000円、8000円、12000円。
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2007年5月 9日, dans 京都 フレンチ | lien permanent