●東西食遊記 東京「ル・マンジュ・トゥー」 |
発売中の「週刊文春」6月29日号、巻末グラビアの「東西食遊記」は、東京・納戸町の「ル・マンジュ・トゥー」です。以前のお店と同じ場所で、いったん更地にして建て替えて3月にオープン。今のお店は以前とは逆で、入るなりばーんとキッチンが広がり、階段を上れば2階がダイニングになっています。シンプルシックなインテリアで、非常に完成度の高いコースをいただけます。8皿続くどのお皿も、完璧な作品です。目に美しく口に入れて心地よく、温度、食感、味わいと香りが考え抜かれていると思うのです。豪快に笑って迎えてくださる谷昇シェフですが、いったいどれほどの集中度でお仕事をされているのでしょう。想像するだけで倒れそうな気がするのです。編集者は校了の後などふわーっと気が抜ける瞬間がありますが、レストランのシェフ、とりわけ個人でお店を構えるシェフに休める時などほとんどないのではないでしょうか。自分ひとりに全責任があり、毎日毎日違うお客さま相手にどのひと皿にも全力投球。厨房に立っていらっしゃらない時でも頭の中は常にお料理のことをお考えのはずです。こちらでお料理をいただくと、しんそこおいしくて幸せなのですが、この完璧なお味のための努力を考えると身の引き締まる思いがします。わたしもただ騒いでいるだけではなく、こんな風に人を幸せにする仕事をしなければと、アホな毎日を少し反省したりするのです。
「週刊文春」に出ているメインカットは白と黒のコントラストが美しい魚の料理ですが、それはどうぞ本を買ってご覧ください。こちらは撮影時、いつものようにプロのライトを借りて撮らせていただいたものです。赤ピーマンとオレンジのスープ、と料理名をいただきましたが、シェフの手元のメモをちらっと拝見したら soupe de soleil 、太陽のスープとありました。燃え立つような美しい色、酸味が鮮やかに立ちのぼり甘味がふわりと広がる、バランスも絶妙な夏のスープです。
「ル・マンジュ・トゥー(Le Mange-Tout)」 東京都新宿区納戸町22 電話03-3268-5911 18:30~21:00LO 日曜休み(祝日は営業) 要予約 全席禁煙◎
2006年6月 24日, dans 東京 フレンチ●掲載誌 | lien permanent